富士山行記9【帰宅】
~~家に帰るまでが登山~~
2008年8月9日 午後8時半過ぎ
シャトルバスが駐車場に到着後、打ちあがる花火が霞んだ夜空にきらめいている。
ドカーンと響く爆発音が、山間を何度も跳ね返りこだましていた。
群馬からの親子は、というと・・・
無事下山をし、休む暇もなく着替えを済ませ、最寄の日帰り温泉に向かおうとしていた。
とは言っても、まったく周辺情報を知らないため、まずは、すぐ近くのローソン小山町須走店へ向かったのだった。
店員の人に
「この近くに日帰り温泉とかってありますか?」とおもむろに聞く。
買い物もしないで。
着替えたとはいえ、クーラーの効いた店内が異様に寒く感じたのだ。極限の疲労で体温調節が上手くできていなかったのかもしれない。
店員「すぐ、近くにありますよ、テンケイっていうのが。そこの信号をまっすぐ、5分くらいですよ。
天の恵みと書いて天恵、今日の二人にはなんともピッタンコなネーミング。まさに天からの恵みのような温泉だ。早く入ってゆっくりしたい、気持ちだけはもう到着しているかのようだ。
早速車を走らせる事5分。山間の道で少し不安になったが、明るく広い場所に堂々とあった。
駐車場に車を止め、当然のごとく眠ってしまっている息子を起こす。
父「おーい、起きろ~、お風呂
入るぞー
」
子「う゛ーん!ヤだ・・・ムニャムニャ・・・
」
寝ぼけまなこで、一向に起きる気配が無い。完全に充電タイムに突入してしまった。
父「オイッ!
起きろって。温泉に着いたぞー!」
子「フギャーッ!ギャンギャン!」
まるで、威嚇する猫のように鋭く、釣られた魚のようにビチビチと大暴れ。
アンタ・・・コレでも寝てるのか?おい・・・![]()
しばらく、車から降りずにそのまま経過を待つ
結局、起きない。
うーん、コイツを置いて1人で行くのもなぁ・・・![]()
しばらく考え、まずはカミさんに電話した。
そういえば無事の報告をするのをスッカリ忘れていたのだ。
まだ思考停止が続いているようだった。
過酷な状況をサラッと報告し、風呂入ったら帰ると伝えた。
しかし、カミさんは「ビジネスホテルにでも泊まって明日帰っておいで」と言う。
たしかに、もう9時近くだし、キャンプ場に行くってのも受付けどうなんだかなぁ?
ウーン・・・ビジネスホテル
か・・・
受付するのにコイツを起こしたり、部屋に連れて行くのもめんどうだしなぁ・・・
とにかく、思考が面倒なことは避け、より楽に楽にと考えてしまう。
そして、最終的に考えたことは
高速で帰るべ![]()
せいぜい、2時間半だろ、休み休みで行けばなんとかなるな。
最後まで安易な思いつき、過信による判断選択。コレがとんでもない経験をすることになることは、今までの流れ同様に、知るよしも無い決断だった。
結局温泉にゆっくり入ることもなく、なんともいい加減にも富士山から発つきっかけとなった。
まずは、東富士五湖道路 須走~富士吉田
せいぜい20分程度の道のり、ちょっと疲れたな~くらいの感じで難なく通過。
そして中央道 河口湖~大月JCTまで
ここも20分程度の道のり、なんだこのまま楽に行けちゃうじゃん、と気楽な状態。
そして、中央自動車道に入って5分程経過したあたり
なんとなく眠気が・・・zzzz
(-_ゞゴシゴシ
Σ(・o・;) ハッ!
の繰り返しが数回
眠気とは突然、襲ってくるものだった。
コイツが睡魔か![]()
Σ(・o・;) ハッ! の後の胸のドキドキ ホンの一瞬なのに目の前がパチンとする。
よく古いTVの映りがパチンと切れて入りなおるような感じ。
一瞬我を失ったあの瞬間があんなにドキドキするとは夢にも思わなかった。
今まで、釣りや行楽でソコソコの遠出をしても、そこまでのような現象はなかった。
ましてや居眠り運転などは過去に一度も無い。それだけ限界域での運転をしたことが無い、とも言えるのだが。
今回は明らかに今までと違う現象だったので、これはヤバイと思い、すぐさま最寄の談合坂SAへ入る。夜9時過ぎとは言え、さすが大きいSAは人の賑わいが違う。
眠気覚ましに何かデザートでも・・・と、おもむろにご当地ソフトでもないか探し出す。
が、すでに店が閉まっていて、軽食というよりは明らかに食事になってしまうメニューしかない。
仕方が無いので、自動販売機で三ツ矢サイダーを買った。普段めったに炭酸飲料を飲まないため、眠気覚ましに刺激的かなと思って選択。懐かしい味だ。
ちょっとした気分転換も含め、リフレッシュしてまた本道に入る。
口に流し込む炭酸の刺激が、眠気とちょうど良く相殺され集中力も増してきた。
眠くなるたびに、三ツ矢サイダー。ゴクッ![]()
眠くなるたびに、三ツ矢サイダ・・・。ゴクッ![]()
眠くなるたびに、三ツ矢サ・・・。ゴクッ![]()
眠くなるたびに、三・・・・。ゴクッ![]()
眠くな・・・・。ゴ・・・![]()
![]()
![]()
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アレッ?今寝てた?俺?(◎-◎)
明らかに、意識が朦朧としてる感じ・・・
危険
危険
変なドキドキが余計にゆとりを奪う。
そうこうしている内にいつの間にか八王子JCT。そのまま圏央道へ。
この圏央道・・・通ったことがある方はご存知かもしれないが、開通した八王子から青梅辺りまで、ほとんど景色の変わらないトンネルや壁に覆われた道で変化がない。
気持ちはしっかりと、というつもりでも、脳が全然働いていない。
遠くに見える電光掲示板やライトがにじんで見える。
トンネルの両サイドのオレンジのライトなどは、まるで火を吹くドラゴンみたいだ。
道端にあるちょっとした反射板が人に見える。
幻像が見え始めた・・・
こりゃヤバイ!なんとかSAに緊急避難だ!
が、行けども行けどもなかなかSAがない・・・
時速80キロ以下で、トロトロと・・・気付くと60キロを下回っていたり
交通量の少ない圏央道で良かった。今だからこそ言えるが、圏央道の通過はほとんど覚えていないくらい、朦朧と運転していたようだ。
考えてみれば無理もない。8日の朝から起きて仕事して、その夜に仮眠しただけで富士山往復して9日の夜まで起きているのだから。ほとんど寝ていない状態で限界を超えた死の世界に足を踏み入れていた。
実は圏央道は狭山PAのみしかなく、それもずっと関越自動車道よりだったのだ。
やっと見えたコーヒーカップのマーク。すぐさまウィンカーを出し、おもむろに駐車場に車を止めた。
なにやら地元の若者か、それとも旅行の途中かわからないが、大音量による音楽が賑やかに流れていた。
これが、有名なウーハー族かぁ、ちょっとしたコンサート会場のようだ、なんともスゴイもんだなぁ~、と感心しつつも
ドンドコと宗教的な楽曲に似た重低音の心地よさにすぐに眠りに入っていた。
しばらくたつこと数十分・・・まだ1時間も経過していない
(;゚ロ゚)ハッ
ココはどこ?ワタシはダレ?
看板を見る・・・狭山PA・・・
(゜Д゜) ハア??
えっ?何?ドコ?何でココにいる?家じゃないの?
寝ぼける一瞬を客観的に感じ取れる人はどれだけいるだろうか?
今まさに、飛び起きた瞬間、我を失っていた・・・
冗談抜きで、何が何だかサッパリ分からない状態だったのだ。
コレが寝ぼけかー![]()
全然何が何だか分からなくなっちゃったなー
高鳴る胸のドキドキ、夢を見ていたかのような非現実的な現実。
さっきまで運転してたと思ったのに・・・
いつの間にSAに入ったのだろう?
夢で運転をしていたのか、運転をしながら夢を見ていたのか・・・
とにかく、すべての世界が信じられなかった。
あぁ・・・早く帰りたい。とにかくウチに帰って布団で眠りたい。
心から安らぎを求める瞬間だった。富士山の下山中よりも安らぎを求める。
よっしゃ、少し寝て落ち着いた。また元気が出てきた。なんとかなるかな、頑張って帰ろう。
まだ、ウーハー族が賑やかに振舞っている。なんとなく危険な感じだから、さっさとオイトマしよう。
おもむろに、圏央道に乗り込み、帰りの道を進んだ。
順調に鶴ヶ島JCTから関越自動車道へ。あとはだいたい40分くらいだ。
もう、ココまで来れば・・・
が、しかし・・・
睡魔は安心とともにやって来る・・・・そう何度でも
恐るべし睡魔![]()
ヤツはすぐにやってきた。自分に乗り移るのが楽しくて仕方ないように。
コックリ・・・コックリと、ヒヤリハットの状態が何度も続く。
またしても、極限状態で生きた心地がしない。
やっぱりダメだ。もう一度SAに入ろう。そして入った場所が上里SA。
埼玉県と群馬県の県境にあるところだ。ここでまた一眠りをしよう。
もうココまで来れば、あとは藤岡JCTと高崎JCTを通り越してすぐだ。
あせらず、ゆっくりと休んでいくことにしよう。
あっという間に、眠りについた・・・。今度こそ安堵の状態で。
が・・・
そんな静寂は30分と持たなかった。
子「とーちゃん、ココドコ?家に着いた?」
Σ(゚皿゚) ガビーン!・・・
身内かよ・・・っていうかオマエかよっ![]()
っていうか、さっきまで寝てたじゃん![]()
![]()
起こしても起きないくせに、勝手に起きやがって。
せっかくいい気持ちで寝てたのに・・・起こすなよぅ・・・![]()
恐るべし我が息子![]()
![]()
睡魔もイヤだけど、安眠を奪うこんな息子もイヤ。
イヤ、むしろそれでこそ我が息子。それなりのオチをありがとう。
息子に起こされ、眠りから覚める。時間は11時過ぎ12時に近い。
結局少し眠ったので、疲れもやや回復した。
父「よし、家に帰るか!」
気分的には神津牧場ジャージー牛乳ソフトが食べたかったのだが、店に入って確認する気力もなし・・・
また、本道に入り我が家に向かった。その後は順調に、大きな事故もなく無事に我が家に到着した。
結局、息子はまた眠ってしまったが。
帰ってくると平穏無事。だが、一歩出ると想像を絶する世界につながっている。
世の中とは、自然とは、なんと面白いものなんだろうか。
今回の登山で、親子ともに立派に成長できたことだろう。
そして、何より家族というものの存在に幸せを感じた旅だった。
間違いだらけの選択の中、様々なものの恩恵と守護をうけながらも、ようやく、二日間にわたる親子の大冒険が幕を閉じた。
この翌日、10日には友人宅でのBBQに招かれ、武勇伝に花が咲いたのは言うまでもない。
すべては、7日の準備している時に来たこのBBQお誘いメールが、すべての決断の根幹にあったことなど、今となっては笑い話で終わらせられる・・・
完
あとがき
なんてことない親子二人の富士山の登山の様子を書いてきましたが、書いていて自分自身でも改めて思い直すことや、感じる出来事もあり、独りよがりかもしれませんが結構充実した一時でした。
最初はこんなに長編になるなんて思いもしなかったのですが、書いているうちに盛り上がってしまい、ドラマティックに仕立ててしまいました。長話しになり申し訳ないと思いつつも、一生懸命読んでくれる方や感動して涙を流してくれる方のコメントなどがより励みになり、つい調子に乗ってしまいました。
ここまで読んでいただいて本当にありがとうございました。
富士山を甘く見てはいけない、というメッセージとともに、一番甘く見ていたのは自分自身であり、過信というものへの戒めを込めました。また、親子の絆というものや、子供の頑張りというのもまだまだ世の中捨てたもんじゃないな、と希望も込めてます。
読み手がそれぞれ何かしらを感じ取ってもらえるキッカケとなれば、これ幸いに思います。
あと、居眠り運転だけは絶対避けたほうがいいですね![]()
避けられないから眠ってしまうんでしょうけど・・・そうなる前の準備が肝心か![]()
最後の参考写真
これが息子の勲章デス
オモテ(扇屋オリジナル、と言ってました)
1,400円
チーン![]()


じんさん、こんばんわ!

引越し作業に疲れて、こちらに遊びにきました
本当に無事に帰宅できて良かったですね~
私もこれを読むまでは、富士登山をもっと軽く考えていたので、事前準備の大事さを改めて知りました。でも、いつか登頂したいです。
最終回なのがちょっと残念です
投稿: みーみ | 2008年9月 6日 (土) 18時49分
長編武勇伝、堂々の完結ですね!!
ちょっと本編からずれますが、私も圏央道は使うことが多かったので。。
こわいっすよね!!
いや、確かに交通量が少ないのはいいんですけど、あの単調な景色、さらにはシーンとした感じがオソロシス。。
本当に無事で良かった♪
お疲れ様ですー!!
投稿: 蘭 | 2008年9月 7日 (日) 01時39分
あれーっ、終わっちゃったのぉ
毎朝、読むのメッチャ楽しみにしてたのにー
本当に面白かったジョ
じんさん、絶対本書いて出版社に持ってくべし!
あとがきも素晴らしいジョ
それにしても本当に富士山って怖いね。
帰りは事故にならなくて本当によかったジョ。
私はいつも眠気ざましにチョコを持っています。
あっ、運転じゃなくて電車でね(アセ)
っつうか眠くなくても食べてるけど。
また来年富士山登る?
次の報告が楽しみだからぜひ!(笑)
投稿: じゅん | 2008年9月 7日 (日) 07時22分
>みーみさん
引越し準備は順調ですか?
段ボールだらけの部屋と過ごした時間がミスマッチで
なんとも入居当初のような変な感覚になりますよね
荷造りは記憶の整理みたいな感じ
読破ありがとうございました
投稿: じん | 2008年9月 7日 (日) 09時34分
>蘭さん
お~、読破ありがとうございます
身もわきまえずツラツラとやってしまいました(笑)
圏央道のあの感じ分ってもらえて良かったです
特に夜は味気ないですよねー
ま、味気ある高速道路ってのが何なのかは不明ですけど(^^;ゞ
本編からずれる話なんてとんでもない
今回の核ですよ、居眠り運転の(爆)
投稿: じん | 2008年9月 7日 (日) 09時41分
>じゅんちゃん
終わっちゃったねぇ。楽しんでいただけましたかね?
読破ありがとさんでした。
来年ももしかしたら登っちゃうかも(爆)周りでアチコチから声がかかっててねぇ。結構登りたい人が多いみたいで。
っていうかさ、
眠くても眠くなくても、どのみちチョコは食べるんやんけ(笑)
ホントにチョコ好きやのぅ
投稿: じん | 2008年9月 7日 (日) 13時36分
やっと終わったかーwww
自費出版なんてどー?www
詳しくは知らないけど
ブログ本なんてカッコヨクナイ?
しかし大変険しい登山だったのですなー
オツカレサマー
投稿: 悶奇威 | 2008年9月 7日 (日) 15時46分
>もんちゃん
やっと終わったさー
長すぎだったよね(^^;ゞ
ブログ本・・・発行部数せいぜい二桁・・・
よーし、考えてみるかー(爆)
オツカレサマー
投稿: じん | 2008年9月 8日 (月) 06時13分