富士山行記6【達成】
~~決死の山頂、雷雲と共に~~
2008年8月9日 富士山麓 7合目付近
連なった雲の切れ間から降り注ぐ陽射しの中、体力を絞りながら一歩一歩登る親子の姿があった。
午前零時に登山開始後、既に8時間を経過しようという頃である。
青から水色に広がる空一面には、好き勝手にちぎった様な白い雲が、自由な意思に赴くまま、目的もなく流れている。
風の力よりも、自らの意思で雲が動いているようにも感じる。
大気の強弱が肌に直接伝わってくる。澄んだ空気をめいっぱい吸い込み、胸の鼓動を一定に保つ。
ジグザグに導かれる登山道は、見上げると点々と人が連なり、ちぐはぐな装飾品のようだ。統一されていない色彩、ジリジリと動くその装飾品は、自分が登ることで徐々に短くなっていく。
スイスイ登る者、ゆっくりゆっくり登る者、途中で座って休む者。
様々な人が、ザクザクとした溶岩に足を沈めながら、一歩一歩登り続ける。
黙々と・・・
その目的はみんな同じだ。
頂上に行くこと。
必死に登り続ける。何のために登り続けるかを自分自身の中に持ちながら。
ただひたすら、登り続ける。日本人も、外国人も。
人は何のために山に登るのか?辛く、厳しく、時には危険を伴うのに。
なぜ、頂上を目指すのか?
その答えは、登った人だけが持っている。そして、答えはヒトツではない。
子「疲れたー
疲れた~
つ゛か゛れ゛た゛~
」
父「よしよし、よーく頑張ってるぞー、もう少し、もう少し。もうココまで来れた。」
相変わらず、「疲れた」の連発だ。しかし・・・
「もうイヤだ
」の弱音は一度も吐いていない![]()
そう、息子はまだ諦めていないのだ。
疲れた現状に不満を持ちつつも、頂上まで行く、目指す答えは失っていなかった。
前回でも述べたが、
「頂上のお土産屋でお友達にお土産を買う!」
大人からすると軽い答えかもしれない。たったそれだけのことに、と微笑ましい想いもある。
それとも相当友達想いか、単なる見栄っ張りなのか、息子本人の中にある闘志は、弱音を吐くことなく燃え続けている。
純粋だ。
空を見上げる息子。
その心の中には一体どんな想いが込められていたのだろう?
おそらく、相当過酷な厳しい状況であるにもかかわらず、楽しさや爽快感もあったのだろうか。
富士登山により、多くの事をカラダを通じて感じているだろう。
それが無意識だとしても、深い記憶の隅だとしても、心に刻む景色になって欲しいと願う。
それと共に心の中で、息子の成長に感動を覚える。
自分も相当きつくなって来たが、連れてきて良かった。
一緒に登山できて良かったなぁ~、と思えてきた。親心と言うのは、こういうことなんだな、と改めて感じる。
自分の親もこういう感情を自分を通して感じていたかと思うと、なんとも照れくさいような、そして改めて生んでくれた事、育ててくれた事への感謝気持ちも沸いてくる。
もちろん、こういう想いは登山中にすべて感じるものではない。
振り返って思いなおすことで気付く感情や、湧き出す気持ちもある。
自分自身の精神世界を見つめなおす良い機会なのかもしれない。
渋々ながら、ブツブツ言いながらも八合目 胸突江戸屋に着いた。
ここは富士吉田口からの登山道との合流地点となる場所だ。
さらに人が多くなる。下山道ともやや合流する位置になり、とても賑やかな雰囲気だ。
日はだいぶ高くなってきた。時間はAM8:40。
このままだと、かなり順調なペースで頂上へ行けるかもしれない。
遅くとも11時までには登りきれるか?早めに出発した甲斐があった。
ゆっくりと休憩をし、ウィダーインゼリーなどでエネルギーをチャージする。
足の筋肉は、ほぼ限界点。疲労もピークに近い。
車で言えば、アクセルを吹かすとすぐにレッドゾーンになってしまうほど、吹け上がりが良すぎる感じだ。
要はオーバーヒート気味とでも言おうか・・・
健脚な人であれば、まだまだ余裕なトコロだろう。
しかし・・・
事務職で運動不足。
ペン以上の重たいものを持たない仕事(それはウソだが)
普段、机仕事で日々の歩数も2000歩以下。
毎日の消費カロリーが摂取カロリーを超える事もなく、内臓脂肪の蓄積に余念が無い生活を送っている我が身。
良くぞここまで頑張っていると、自画自賛の境地でどこか清々しい。
精神的にイッてくる頃なのは重々承知なのだ。
が、あえて、そういう状況を楽しむ。
自分独りでならば、コツコツとものすごくゆっくりながらも上を目指せる。
ところが・・・
遂に息子が根をあげた。
「足が疲れたー
もう歩けない、痛い・・・
」
・・・( ̄  ̄;) うーん、コマッタ![]()
どうにもこうにも、もう騙しは通用しないくらい限界が来たようだ。
無茶をして怪我でもしたら大変だ。なんとか休み休み来たが、やはり小学校1年生にはまだ無理だったか・・・。
“逃げる”というような弱音ではなかったが、限界点を自分自身で察したようだ。
悔しさもこめて、怒りも含んだ口調で
子「父ちゃん、おんぶ
!」
Σ(゜皿゜) えっ?
お、おんぶですか?
出たな小僧、お得意の・・・(-_-;)
あの~、父ちゃんも相当キテルんですけど・・・
え~、ココは標高3400m超え、空気相当薄いんですけど・・・
とは言いつつも、限界点に達している息子に無理をさせても危険だ。
しかたがない、息子に無理をさせてしまっている懺悔の意味でもおんぶをしよう。
頑張る父ちゃんを演じるのだ。息子の要求を何の抵抗も無く受け入れるのだ。
今は突っぱねる時ではない。全てを受け入れる、受け止める、そういう時が今なのだ。
これは甘やかしではなく・・・
そう、愛情だ!![]()
(π0π) ウルルルル~
限界点に達したバカ親子は、相思相愛で心の涙を流しながら登り続ける。
熱血根性マンガの一場面のように・・・
もちろんBGMはコレに限る。
♪思いこんだら 試練の道を
行くが男の ど根性
真っ赤に燃える 王者のしるし
巨人の星を つかむまで
血の汗流せ 涙をふくな
行け行け飛雄馬 どんと行け
息子よ、どうだ俺の背中は![]()
気力だけは名シーンに勝るバカ親子の心の叫び![]()
( ̄∇ ̄+) キラキラキラ~♪![]()
体力も限界に近い山頂付近で、すでに気力のみで子供一人をおぶって登る。
19キロの体重、三本のステッキ、二人分の荷物。
一歩を出すのがこれほどしんどいとは。
数歩歩いては休み、数歩歩いては休み。
( ̄u ̄;) ハァハァゼェゼェ…
すぐに限界を悟る。
( ̄Д ̄;) ダメだぁ~
この状態では絶対頂上までいけない。無理だ。まだ、先は長い。
しばらくして、そんな父ちゃんの頑張りを感じたか、はたまたヨロヨロ歩行する事に不安を感じたか
「自分で歩く、まだ頑張る。」と、言い出した。
「お、おぉ・・・そうか、頑張れるかー
」
o(~o~;):ハァハァ・・!!
頑張りが認められたのか、見限られたのかは定かではないか、まあ結果オーライとなった![]()
ほどなく、八合目五勺 御来光館へ到着した。
ココまで来れば、頂上まであと少し!と言いたいところだが、
その「あと少し」が、全然あと少しではない。
ジグザグに連なる登山道は10以上にも連なって折れ曲がっている。
ディズニーランドのアトラクション待ちのジグザグとは次元が違う。
とにかく一歩一歩がキツイのだ。
中にはスイスイ登る人も居るだろうが、大抵の人はキツイ登りをゆっくり登るのではないか?
ひょっとすると富士山に登ろうとする人は、普段からトレーニングをしていてスイスイ登るのが普通なのかもしれないが・・・
まあ自分の体力が無いということに尽きるのだが・・・
いよいよ残りの九合目の道のり。
まずは中間地点の目印ともいえる白い鳥居を目指す。
陽射しもさらに高く、見上げて確認をするほどになってきた。
歩く時の目線は常に真下だ。上は見ない。見てもため息が出るだけだ。
一歩一歩溶岩の砂利をザクザクと踏みしめながら登る。
背中には大きく広がる空と、雲と、大地がある。振り返れば雄大な景色を垣間見る。
結局、真下か、後ろか、上を見るだけになってくる。
ふと後ろの景色を見ると、大きな上昇気流がすごい勢いでグングン登っている。
上昇する雲を目の当たりにしたのは初めてだった。
水蒸気が上へ上へと登っていく。登るというより、むしろ吸い込まれていくようだ。
冷凍庫を開けたときの冷気が降りてくる様子を、逆再生にでもしてみると同じような光景かもしれない。高気圧と低気圧の関係か・・・
好きな科目に理科は含まれていたが、好きなだけで不勉強な自分の頭には、学術的な根拠など染み付いていない。目に見える現象がすべてだった。
あっという間に大きな入道雲になり、漏れる陽射しの量が減っていった。
ゆっくりゆっくり、結局またおんぶの繰り返しをしながら登り続けた。
そして・・・
遂に、息子は一歩も動けなくなった・・・
それとともに・・・
父ちゃんももうおんぶは無理だった・・・
二人して登山道に座り込んだ。
ふと見た時間は11時。当初登頂目標に予測した時間だった。既にその時間は周り、当てもなく休みを過ごす。
既に息子は力なく、自分に寄りかかってきた。よく見ると既に眠っていた。
考えてみればすでに11時間も歩き続けている。
普段、朝7時に起きたとするならば、もう夕方の6時だ。一日中歩いてきたのだ。限界に来て当然だった。
寝不足のまま本当に良く頑張ってくれていた。
スヤスヤと寝息を立てて眠る息子に、申し訳ない気持ちでいっぱいになった![]()
自分の欲で息子に無理をさせている。過酷な状況に陥れた。
当初は意気揚々と楽しいことばかり考え、無茶苦茶なことにチャレンジしているという意識が無かった。
今はむしろ、必要以上の経験を自分のエゴで押し付けてしまったという後悔と詫びの念に押し寄せられた。
「ゴメンな・・・本当に良く頑張った・・・![]()
」
心から申し訳なく、心から頑張りを認めた。
そう思いながら、寄りかかった息子を抱きしめていたら、自然と涙が出てきた![]()
言葉では現しきれない、複雑な気持ちだった。
悔しさ、喜び、感謝・・・
色々な感情が入り混じって、なんだか心から泣けた。
感無量とはこういうことか・・・
幸いサングラスをしているため通行人は気づかれずに済んだ。
頂上前に休憩している親子二人の父ちゃんが、富士山で号泣しているとは誰も知る良しも無い。
ま、号泣というほど涙は出なかったのだが、心の涙は溢れ出ていたのだ。
子供はしばらく寝かせて、自分も休んでスッキリしてきた。
天候はあまり安定した傾向では無くなってきた。
雲行きが怪しくなり、頂上付近が雲に覆われてきたのだ。
息子を揺り起こし、例のごとく不機嫌さは増した。
一瞬の睡眠とはいえ、寝起きには間違いない。
おもいっきりジタバタした。
そこに、たまたま見合わせた外国人の女性が、スッと飴玉をくれようとした。
なんともやさしい心遣いだろう。
人と人との距離と言うのは、時に遠くもあり、こんなにも近くであることが出来る。
人種や国境など関係ない平和の精神は、こういう一つ一つの繋がりなのだろう。
その優しい心を、息子は見事に突っぱねて、素直に受け取らなかったのだが・・・
無理もない。寝起きのすぐさまに憤慨して怒っている時に、ブロンドヘアーの青い目をした外国人からアメを出されても、そうそうプライドが許すものではなかったかもしれない。
ありがたくその外国人の女性には気持ちだけを頂き、申し訳ない気持ちを込めて苦笑いを送った。
彼女もニコッと笑顔を返してくれた。
その後も少しの抵抗はあったが、また再び歩き始める事が出来た。
本当に良く頑張っている。
口では不満を言いながらも。
頂上まで本当にあと少しだ。
今まで歩いてきた時間、距離から比べるとほんの僅かだ。
あと一時間もかからずに到着できるだろう。
突然・・・・ゴロゴロゴロゴロ・・・・![]()
頂上の方で急に鳴り響いた。
雲も急に広がっていく。
今までの真っ白な清潔さは一切消え去り、灰色のくすんだただの水蒸気の固まり。
悪意でも持ち合わせたかのような灰色の雲が覆いかぶさる。
大きな雷鳴を轟かせながら、あっという間に霧で包み込んでくる。
頂上は既に雲の中に入ってしまった。上を見ても下を見ても今までの景色とはまるで違う。
ただ単に、水蒸気に囲まれた白い世界になったのだ。そして雨が降ってきた。
明るい視界から白い視界に変わった天候は、ほんの数分の間に起こった。
幸い既にレインコートを着込んでいたため雨には対処できた。
しかしカミナリだけは対応できない。
ポツポツと音を立てていた雨音が、いつのまにかパシパシ、カラカラと言い出した。
下を見ると白いBB弾のような丸いモノがパラパラと落ちている。
霰(あられ)だ。
急激な気温低下から雨が霰に変化したようだ。
昔、鳥山明のマンガにDr.スランプ アラレちゃんなんてのがあったなぁ。
なとど余裕の思考になれるはずもなく、あちこちで「痛いッ」と言った声も上がってくる。
気温が急に低くなってきた。山の天気と言うのは本当に変わりやすい。
ウチのカミさんの機嫌も本当に変わりやすい。
いずれも予測不能だ。いずれも、優しさもあるが厳しさも兼ね備えていると言うわけだ。
(これはフォローなのか・・・?)
ゴロゴロゴロゴロ・・・・![]()
![]()
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雷鳴はすぐに収まりそうにもない気配だ。
しかし、どうすることも出来ない。一番上に登るのが一番安全なのだから。
山頂の山小屋ならひとまず無事を確保できる。
はやる気持ちとはうらはらに、やはり一歩一歩はゆっくりだ。
子供のペースもそうだが、自分自身が何より遅い。
途中、一旦雨も落ち着いた。カミナリ雲も少し隠れているようだ。
「父ちゃん、お腹すいたー
」
11時も回り時間もお昼に近い。
頂上でゆっくり休みながら昼食をとるのが理想だ。天候も不安定でなるべく先に進みたい。
しかし、ここでもやはり無理をせず、子供の希望に沿って座っておにぎりを食べることにした。コンビニで買ったおにぎりだ。
疲れが極限に達すると食欲も無くなるが、まだ食欲があると言うことは本当に救われる。
それだけ元気があると言うことだ。
雨がパラパラ、霰がパラパラ降りしきる中、二人しておにぎりを食べた。山頂まであとわずかな位置で黙々と。
本当にウマイ![]()
![]()
こんなにウマイおにぎりは滅多に無い。
隣には弱りきって無言になりながらも、必死におにぎりを食べている息子がいる。
また、感動して泣けてきた![]()
オマエは本当に良く頑張っている。
これ以上辛い思いはさせたくないと思いながらも、現状の矛盾に侘びを入れ続ける。
天気も少し回復してきた。本当に少しだが陽射しも出たりする。
休憩も食事も済まし、いよいよ本当のクライマックスに向けて足を踏み出した。
もう、頂上までほんの数回ジグザグを繰り返すだけだ。
目で見て数えることも出来る。
傾斜も急になり、岩をよじ登るくらいの箇所もある。
息子は必死に登り続けた。もう「おんぶ」とは言わなくなっていた。
自分の足で、自分の気力で、自分自身の力で、全身全霊を込めて登っている。
「本当にゴメンな・・・本当にゴメンな・・・」
心の中で息子に謝る。何度も何度も・・・
空からはそんな気持ちは関係無いとのごとく、雷鳴と固まった雨粒が降り注ぐ。
足元にはコロコロと白い粒々が転がり落ちていく。
山頂付近は登山道も狭く、ペースもゆっくりだ。
みんな行列になって登る。
ロッキーのテーマが流れてきそうだ。
あぁ、ロッキー・・・久しぶりに見たくなってしまった。
YouTubeのすごさに時代の進化を感じるな・・・
話がずれてしまわぬうちに、元に戻そう。
本当にもう少し・・・
本当にあと少し登れば・・・
すると
「父ちゃん、オシッコ・・・」
( ̄■ ̄;)!?あん
盛り上がっていたBGMもピタッと止まる。
な、何を今更・・・
もうすぐ、目と鼻の先じゃないか・・・
子「父ちゃん、オシッコ・・・漏れそう」
父「イヤイヤ、ガンバレ。ココは本当に我慢だ!」
子「ええーっ![]()
」
と言っても、息子も気付いている。さすがに立ちションできる状況ではないことに。
息子の足取りもさらに勢いを増す。
頂上に行きたい理由が、もう一つ増えたからだ。
最後の曲がり角を曲がって直線に階段状に登る。
本当の最後の道、一歩一歩。もう目と鼻の先だ。
息子はスイスイと登っていく。(事態は急を要するのか)
ここの道が辛い。いつ来ても本当に辛い。
一歩が十歩分くらいに感じる。
試練の道だ。
BGMはもちろんSurvivorのEye of the tiger
気分はもう既にロッキーだ。
打たれても打たれても立ち上がる気力。
何者にも負けない闘志。
自分自身は完全にイッてしまっている(爆)
(かなり大げさだが)
あちこちから、「やったー!」とか「登ったー!」という声が聞こえてくる。
自分ももうすぐそこだ。
切れる息と、吐き出す白い息、苦しい最後の石段。
頭の中は足を一歩踏み出すことだけ。
ついに、最後の石段を登りきった。
登頂達成だ・・・
やった・・・
遂に登りきった・・・
力も無く、フラフラと頂上の地を踏みしめる。
息子は既に十段以上も先に登っていた。
最後は息子の方が強かった。![]()
最高潮に達した気持ちは、心の叫びをあげ続ける。
やったぞぉー!![]()
![]()
![]()
![]()
もちろん最後の達成のBGMはこれに尽きる。
今までの苦しみが走馬灯のように頭の中をよぎる・・・
エイドリアーン!![]()
![]()
もうここまで来ると、ロッキーシリーズもいい加減くどいか・・・
でもせいぜい1分30秒以降まで聞いて欲しい
父「やったなー!オイッ
」
子「ウン、やったー
頑張って登ったね。」
子「で、オシッコ![]()
」
またもや、最高潮のBGMもピタッと止まる・・・。
父「おー、そうかそうか
」
テンションも高く、頭もぼんやりしながら息子を抱えてトイレに一目散。
ドリフの撤収の曲にいち早く変わってしまった感じだ。
何だコレはコントか?
息子のズボンを一気におろし、放尿の快感に臨席する![]()
一体、どんな達成感だったのだろう?
どんな安堵感だったのだろう?
開放感もあっただろう。
すべてが、もう自分の頂点ともいえる世界になっていた。
改めて息子を抱きかかえ
「よくやったな!偉かったな!立派だ!最高だぞ!
」
と声をかける![]()
息子も
「ウン、辛かったけど楽しかった
ものすごく疲れたけど」
さっきまで不機嫌だったのがウソみたいにキラキラ
している。
父「辛い思いをさせて本当にゴメンな。父ちゃんが悪かった。」
結果的に登頂できたものの、罪悪感は消えそうにも無い気持ちで一杯だ。
子「父ちゃん全然悪くないよ。
じん君が自分で登りたいって言っただけだよ。」
すべて救われた。息子からのこの言葉。本当にありがとう![]()
コイツは立派な息子だ。最高の俺の息子だー。
感動のBGMはしっとりとこんな曲がふさわしいかもしれない。
時には急ぎすぎて 見失う事もあるよ仕方ない
ずっと見守っているからって笑顔で
いつものように抱きしめた
あなたの笑顔に何度助けられただろう
ありがとう ありがとう Best Friend
コテコテの熱血ドラマばりの演出に浸りながら、がっちり握手で登頂を祝った。![]()
子「父ちゃん、お土産
お土産
どこのお店?」
父「おっ、そうかそうか、イロイロあるぞー、端からゆっくり見ていこう」
息子にとって念願の友達へのお土産調達タイムだ。![]()
天候は相変わらず悪い。近くや遠くでゴロゴロ鳴っているし、雨も降ったままだ。
自分は必ず山頂の山小屋でピンバッジを買う。どの店も当日の日付を刻印してくれるのだ。
一生モノの記念として、そして過去の記録として必ず買うことにしている。
自分が死ぬまでに、一体いくつのピンバッジを集めることが出来るか。
健康であることの証と、世界が平和であることの証にもなる。
今回で4個目となった。
息子はまず自分自身にメダルを買った。5~6センチくらいの銅のメダルだ。
やはり記念に日付を刻印してくれた。さらに名前も。
誇らしげに、そして嬉しそうにそのメダルを握り締めていた。![]()
初登山にして初富士山登頂。コイツにとってかけがえの無い自信となるだろう。
くじけることも知った。挫折を知るのは辛いことだ。しかし、その後にある達成という栄光も知った。
時にはわがままも出るだろう。まだ子供だから。
しかし、今日のこの日の栄光は自分自身で勝ち取った。
根性だ。何よりも自分自身に負けない気持ち。
自然環境の中で命の危険を感じながら、人間はちっぽけであり、大きくもあると。
まっすぐ正直に、素直な大人に育ってくれればそれでいい。
今この瞬間が、二人にとっての日本一の時だった。
最高だ![]()
友達に買うお土産を選ぼうとしたが、急にまた天候が悪化した。
店の外に出るのも危険なくらい雷鳴が鳴り響いている。
しばらく、そのメダルを買ったお店で休ませてもらうことにした。
もし天候が回復すれば、南側の郵便局、そして本当の最高峰、剣ヶ峯まで行ってみようと思っていた。このとき時間は12:30分。まるまる半日をかけて到達した念願の頂上だった。
達成感に浸り、のんびり荷物の整理をしながら、天気の機嫌が直るのを待った。山小屋の中はどこかしっとりとしていて、外とは比べもならないほどの安心感がある。
落雷の危険を避けるため、電気は一切消したままで、うすぐらい部屋の中で子供と肩を寄せ合っていた。
天候が変わりさえすれば、なんとか予定通りに下山できそうだ。
そう、変わりさえすれば・・・の話だったのだ。
そして、変わる方向は良い方向ではなかった。
つづく
次回 決死の下山
“死線を越えて・・・”


太古の昔に登ったじゅんです(^^;
今、友達と待ち合わせのカフェでお茶してますが感動して涙出て困ったジョ
素晴らしい息子さんだジョ!
本当にりっぱです!
きっとずっとおんぶしててもらいたかったと思うけど父ちゃんのことを思って最後は自分で頑張ったんだね。1年生だし絶対限界は越えてるはずだから、本当に強い気持ちを持ってるね。
投稿: じゅん | 2008年8月31日 (日) 13時41分
小学校5年生の夏に5合目から登ったあくあです。
息子さん、えらいね~。基礎体力あるね~。
つい先日のニュースで「8月9日に富士山に降ったあられは、初冠雪と認められました。これは観測史上最も早い冠雪です。」と言っていました。
まさに、じんさんの登られた日ですよね。
父子の冒険にどきどき
投稿: あくあたるかす | 2008年8月31日 (日) 21時37分
達成、おめでとうございます。
言葉では言い表せないような、素晴らしい出来事だった事が
すごく伝わってきて、感動的でした。youtubeもいいタイミングです(^.^)
山登りとかのアウトドアにはほとんど興味ない自分だけど、
じんさんのブログを読んだら、登ってみたい気分になりました。
まぁ、根性無しなので登れる自信は無いけど^_^;
投稿: G55 | 2008年8月31日 (日) 23時11分
>じゅんちゃん
普段は相当子供なんだけどねぇヤツは。
単に自分が見下してるだけなのかなー?まだまだ子供だって。
でも本当にこのときは立派でした。
感動が伝わって良かった。
投稿: じん | 2008年9月 1日 (月) 06時03分
>あくあさん
おー、ご無沙汰です。元気でしたかー?
そうソレ、初冠雪。次回で触れますがホントそうだったみたいですね。
ま、観測上の問題で後日分ったことですけど。
あくあさんも小学校で登ってるんですね。スゴイ。
記憶としてキチンと残ることって大切ですね。
まだまだこれからもドキドキですよー
投稿: じん | 2008年9月 1日 (月) 06時06分
>G55さん
熱く厚いG55さんならロッキーとか好きかなーと思って。
っていうか自分がかなり好きなんだけどね(笑)
やっぱりアレって相当アツイじゃない?
登山は別として、普通にアウトドアって楽しいよ。
まずは自然に向き合うっていうことからかね。
投稿: じん | 2008年9月 1日 (月) 06時09分
先日、ニュースで8/9の富士山の様子が写っているのを見ました。
例年にない、「降雪」があったと言う内容のニュースでした。
これって、じんさんが登山した日ですよね。
思わず、赤いレインコートがいないか探しちゃいましたよ。
投稿: ほうちゃん | 2008年9月 1日 (月) 14時56分
>ほうちゃん
そうみたいですね、ホントに修羅場でした。
今となっては笑い話のようですけど。
山頂の最高気温の後で、かつ、気象台から目視で降雪が確認されると観測上「冠雪」となるようです。
8/9以降に最高気温が更新されていたら、当日の降雪は「初冠雪」にはならなかったみたいですね。
貴重な体験でした。
投稿: じん | 2008年9月 2日 (火) 06時01分